過去を支配する者は未来を支配する
現在を支配する者は過去を支配する
「首相の言うことは真実よりも正しい」と言われたら、あなたはどう思いますか?
当然「そんなわけねーだろ!」って言ってそいつの頭ぶん殴りますよね。
では、幼いうちから「首相の言うことは真実よりも正しい」と教育され、疑問を抱くことことが罪だとされていたらどうでしょうか?
今回紹介する「1984」は、監視や捏造・植えつけによって全く思考しなくなってしまった国民の話です。
1984(1984年版)(※ネタバレあり)
監督:マイケル・ラドフォード
脚本:マイケル・ラドフォード
原作:ジョージ・オーウェル
出演:ジョン・ハート、スザンナ・ハミルトン、リチャード・バートン 他
あらすじと感想
「“チョコレート配給量減少なし”を“週20グラムから25グラムに増加”に訂正」
真理省記録局に務めるウィンストンの仕事は、新聞バックナンバーの捏造です。元の新聞は燃やして証拠隠滅します。
職場でも家でもテレビは付きっぱなしで、オセアニア国指導者の写真が映し出されています。
このテレビは監視の役割(ウェブカメラで常時見られている感じ)を果たしているため電源を切ることが許されません。
党に情報も行動も支配される社会ですが、人々は何も感じていません。思考することは罪とされているからです。
そして思考という犯罪防止のため、言葉の意味を単純化した(二つの意味がある言葉を一つにするとかそういうこと)新しい言葉「ニュースピーク」を使用することを進められています。
人々は毎日テレビで「二分間憎悪」を見て、国家転覆を企むとされる大犯罪者・ゴールドスタインへの憎悪を植えつけ駆り立てられます。
ゴールドスタインは独裁監視社会を打倒しようとしているのですが、
党としては都合が悪いので人々がゴールドスタインを信じないように憎悪を植えつけさせることで、
監視社会へ抱く鬱憤をゴールドスタインを憎ませることで矛先が党へ向かないようにしているのです。
ゴールドスタインの本には、党が押し進める「二重思考」の原理についてこう書いてあります。
戦争は真実でなくても 勝たなくても構わない
戦争の目的は勝つことではなく 継続させる事だ
近代戦の本質は 労働の所産の破壊だ
階級社会の成立には 貧困と無知が不可欠となる
戦争は社会の飢餓を維持するために計画される
戦争は支配階級が民衆に対して行い
目的は相手国に勝つ事でなく
不変の社会構造の維持にある
二重思考とは「2+2=5」といった矛盾に疑問を抱いてもそのまま受け入れることです(そして2+2=5だけど、党が言えば3にも4にもなります)。
当然これまでの常識では「2+2=4」ですが、これからは「5」だし「3」でも「4」でもあるのです。党が言ってるんだからそれが正しいんです。
主人公が党に言われて過去の出来事を捏造しているのは、人々に過去と現在を比べることができないようにするため。
そしてニュースピークが進み思考が禁じられると、今を生きる人々にとって「2+2=5」になってしまうんですね。
現実世界の話で、森友学園問題など安倍首相のスキャンダルを何度も無かったことにしてきた黒川検事長。
権力を持つ人間が「これが正しい」と嘘をついて疑問を抱いたとしてもそのまま受け入れる二重思考は、現実の世界でも起こってしまっているんですよね……
そしてそんな黒川検事長が退職してしまっては都合が悪いので、あれこれ理由をつけて定年退職が延長されました。
検事長は63歳で定年退職のはずが、首相の都合でこの人は68歳まで続けられるみたいです。
新コロナ騒動のどさくさに紛れてとんでもないことしてるからさすがに黙っておけないと、各方面から反対の声が上がっています。
「1984」の世界では、声を上げるとどうなるのか。
逆らったから殺されるなんて、ちゃちな終わり方はしません。
もっと恐ろしい明日が待っています。
これは過去を描いた作品ではありません。僕たちの未来を描いた作品です。
気になる方はぜひご覧ください。
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ラジオ番組「すっぴん!」にて高橋ヨシキさんが紹介した映画の中からディストピア作品のみをまとめた1冊です。
「1984」では「権力を放っておくとこうなってしまうよ」、
ピクサーの「ウォーリー」では「目の前の問題とは直面すべき」などなど
他にも様々なディストピア作品をわかりやすく紹介・解説していますので、
ぜひ読んでみてください。
「1984」がキーになるSFアニメです。
1984原作を読んだ少年がシーズン2でどのような行動を起こすのか。続きが気になります。
お題「#おうち時間」