アメリカで黒人市民の公民権と平等めぐる暴動から数年が経過した1974年、コロラドスプリングスに初の黒人警官が誕生。
映画「ブラック・クランズマン」は、白人からの差別と戦いながらも懸命に働く黒人警官・ロンが、ひょんなことから白人至上主義団体クー・クラックス・クランに潜入するっていうムチャクチャなお話。
黒人が白人至上主義団体に潜入!?そんなバカな話があるか!でも実はこれ、本当にあった話なんです。
ブラック・クランズマン(※ネタバレあり)
主な登場人物
秘密結社クー・クラックス・クラン(KKK)
白人至上主義のおバカさんたち。
移民からアメリカを取り戻すと言って、黒人やユダヤ人などの純血な白人以外の人種を嫌います。
この時代のKKKは以前の野蛮なイメージを払拭するべく、スーツとか着て外っつらを知的に見せて非暴力団体だということをアピールし、会員を増やそうとしています。
映画では銃の射撃練習に、逃げ惑う黒人の的を使っているのですが、あの的は映画用の小道具ではなく実際に売られている物を購入して使ったそうです。あんな物が売られているなんて胸糞悪い。
KKKの主な活動は、十字架を燃やして存在を主張する十字架焼却儀式などの迷惑行為があります(イメージ画像はゲーム「レッド・デッド・リデンプション2」の一場面)。
ちなみに白装束は人々が怖がるオバケをイメージしているようです(迷惑なハロウィンだこと)。
ロン・ストールワース(右)、フリップ・ジマーマン(左)
コロラドスプリングス警察署の警察官です。この2人が、動向を探るためKKKに潜入します。
ただし外見がバリバリの黒人であるロンは電話対応、集会などへの参加は同じく情報部のフリップが行うという、ふざけたバディが誕生しました。
あらすじと感想
「この映画はマジでリアルな話がベースだ」
コロラドスプリングス警察署初の黒人警察官となったロン。ですが所属は記録部で、思い描いていた警察官の仕事はできず隅に追いやられくすぶっています。
「他の仕事をさせてください」と熱心に頼み込んでも聞いてもらえず。だったのに急に呼び出され、黒人警官であるロンにしかできない潜入捜査を任されました。
それは、元ブラック・パンサー党(黒人の人権を主張する団体)クワメ・トゥーレの演説会に行き、暴力的な動きがないかを観察するという任務で、都合良く使われているだけですが、ロンにとっては所属を移るチャンスでした。
ロン初めての潜入捜査では、クワメ・トゥーレのブラックパワーを鼓舞する演説を聴いている人々の顔がアップで映るのですが、一人一人の心に響いているのが伝わってくる演出が素晴らしいです。
ロンはその後も情報部で仕事をするようになり、あるときKKKの会員募集の新聞広告を見つけます。この街では珍しかったKKKの存在が水面下で動いていることがひっかかり広告に載っている番号に電話をかけてみると、KKK地区代表に会えることに。
あまりの展開に思わず潜入捜査用の偽名ではなく本名を伝えてしまったロン。それ以前にロンは黒人ですから、白人至上主義団体になんて潜入できるわけがありません。
だからといって拡大を図るKKKを放っておくわけにもいかず、代理人をたててもらえないかと上司にかけあってみても、「黒人と白人では喋り方が違うんだからこのまま続けているとバレる」と断られます。
上司の言う“黒人訛り”は、実際にロンの祖母とかは該当していたのですがそれは黒人だからというわけではなく住んでいた場所の訛りで、方言みたいなこと。
「私はあなたの言う黒人の喋り方も、白人の喋り方もどちらも喋れるから問題ありません」とバカな上司を一蹴してなんとか代理人としてフリップに動いてもらうことに成功しました。
KKKにうまく入り込み幹部と電話をするようになったロンに、KKK幹部はこう言います。「黒人は話し方ですぐわかる。」バレたのか……?緊張が走ると続けて「君は正しいアメリカ人だ。」と言います。この間抜け!電話の向こう側で笑いをこらえるロンや周りの警察官たち。
潜入捜査官の黒人が入会しているという事実がKKKをコケにしていて最高に笑えるのに、それに加えてこういうバカなやりとりが実際にあったのだから本当にKKKはくだらない集団なんだなと思えました。
一方フリップはというと、疑り深いクランズマン(KKKメンバーのこと)の一人にユダヤ人だと言うことがバレそうになったり、ロンの住所を尋ねたら黒人(本物のロン)がいたぞと言われたり、以前捕まえた犯罪者がKKKの集会にいたりと手に汗握る展開に目が離せません。
何度も訪れる危機を(時に本物のロンの力を借りて)乗り越え、KKKの懐に潜り込み情報を入手、リークすることで迷惑行為をさせないように警察を動かし警備を強化します。
集会を開いた黒人たちをぶっ殺そうと動く一部のクランズマンですが、周りに警官が多く計画を変更、爆弾を集会所ではなく黒人解放活動家のヒロインの家に設置を試みます。
ですが、幅が大きい爆弾はポストに入らず焦っている(ウケる)とヒロインが帰宅、とりあえず車のタイヤに設置、ロンがクランズマンを現行犯逮捕、他の警官が黒人男性が白人女性を襲っていると思い込んでロンを押さえつける、ヒロインは家に入ろうとする、駆けつけた爆弾の設置場所をポストだと思っている別のクランズマンが車の横で爆弾のスイッチオン、クランズマン爆死!ちなみにこれは脚色!
最後にはKKK幹部に電話で「あんたがずっと話していたロンは黒人だバーカ」とネタバラシしてゲラゲラ笑って潜入捜査終了!仕事終わりにビールで喉を潤したようなスカッとした感覚のまま映画が終わるのかと思いきや、抗議活動中の反黒人差別団体などの人々にレイシストの車が突っ込み一人の女性を轢き殺したという2017年に起きた実際の映像を流して終わります。
最初に見たときは笑ってしまった「この映画はマジでリアルな話がベースだ」という冒頭のメッセージがズシンとのしかかりました。まだまだ人種差別が絶えることはなさそうです。
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今回の映画の原作です。潜入捜査のことがより詳しく書いてあるのですが、堅くて真面目な語り口ではなく「黒人のオレが潜入してても全然気づかないアイツらほんとバカ 笑」って感じの読み応えで映画よりも面白いです。映画がどこまで本当か知るためにも必読です。
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犯罪や狩りなど自由度が高く、馬に乗って開拓時代の風景を楽しむだけでも十分に楽しいゲームなのですが、旅をしているとたま〜にKKKのおバカさんたちがでてきます。
先ほどの白装束に引火だったり、十字架を建てようとしているところに話しかけると手を滑らせて十字架の下敷きになって死んでしまったりしてウケます。