アメコミ映画「ダークナイト」の大ヒットによりアメコミをよく知らない人にも認知されるようになったスーパーヴィラン・ジョーカー。悪のカリスマ性爆発と行った具合にジョーカーの良さがつまった映画でしたが、
今回のジョーカーはというと「ダークナイト」は全く関係ないです。それどころか、アメコミ映画っぽくもない……(宿敵のバットマンすらでないよ)アメコミの有名キャラクターの名を借りて、一人の社会的弱者が腐りかけた街で狂っていく様を痛烈に描いています。
「ジョーカー」
主な登場人物
アーサー・フレック
コメディアンを目指す大道芸人です。母親と2人で暮らす貧困層。精神疾患により突然笑い出してしまいます(悲しい時ほど発作が起きやすいみたい)。
とても苦しそうに笑うのですが、その笑い声がまた周囲をイラつかせるような笑いなんですよね……急に笑い出すから周りからは煙たがられ、職場の上司もカウンセラーも彼をしっかり見ようとしない。舐めたガキからは暴行にあい、護身用にピストルを持つようになるのですが、ある時一線を超えてしまいます。
するとその事件がテレビニュースになり新聞記事になり、自分の行いに賛同する者まででてきました。今まで見向きもしなかった人たちが自分に気づき始めた−彼は悪に堕ちていきます。
あらすじと感想
ピエロのメイク中、表情筋をほぐすために口に指を入れて口角をグググっとあげると流れる一筋の涙。そんなシーンから始まったので、こいつはいったいどうしたんだ?と掴まれました。
心の病を持ち、周りからは煙たがられ、ナメたガキどもからは理由もなく暴行され……世の中嫌なことばかりの世の中で、ピエロに扮してニコニコしている自分はいったい何者なのか。
舞台となる1981年ニューヨーク(によく似た架空の街・ゴッサム)は貧富の差が激しい格差社会。ごみ収集会社がストライキを起こし、悪臭と貧困層の憤りが漂う街でアーサーは母親と二人で暮らしています。
アーサーはコメディアンになりたいようで、理解のない職場で働きながらお笑いのネタを書きためています。テレビ番組を見ては、なんかの拍子に出演できたりしちゃって……などと妄想を膨らませながら。
しかし人生そんなにうまくできておらず、ピエロに扮して街で仕事をしている時に若者に囲まれボコボコにされて、同僚が護身用の銃を渡し携帯するようになるのですが、小児病棟の子供達の前で「幸せなら手をたたこう」を歌って踊っている時に銃を落としてしまって子供達に「シーッ」ってやるの笑えました。
小児病棟に銃を持ち込んだバカは仕事をクビになり、帰りの地下鉄で乗客を3人射殺します。これは笑いの発作がでてしまい、自分たちを挑発していると勘違いした若者3人がアーサーに暴行を加えた弾みのできごとでした。
殺された3人は大富豪トーマス・ウェインの会社で働くエリートたちで、テレビでは雇い主のトーマスが「面識はないけど優秀だと聞いてる、亡くなって残念」経緯もしらないくせにピエロに扮した殺人者を「仮面を被らないと何もできない卑怯者」などと言ってるからムカつくんですよ(まあどんな理由があれ殺人はいけないことなのは間違いないのですが)。
んでアーサーはトーマスの隠し子だの、いやいや養子で幼い頃に虐待を受けて精神障害を持ってしまっただの、親しいと思っていたご近所さんとの関係は妄想だの、これは嘘だあれは妄想だったと人生を否定され、
挙げ句の果てには出演を夢見ていたテレビ番組では自分の発作をVTRで流し笑い者にされてしまう。
自分の人生は悲劇じゃない、喜劇なんだ。
そう悟ったジョーカーは母親を自らの手で殺し、あの時自分に銃を渡した元同僚も殺し、毎日しんどそうに登っていた家周辺の長い階段を軽快に踊りながら降りてゆく。しがらみから解放されたように。
そして自分を笑い者にしたテレビ番組の司会を生放送中にぶっ殺し、駆けつけた警察に捕まってしまうのですが、ジョーカーに賛同する貧困層の者たちが救出し指導者のように祭り上げるのです。
わかる。誰だって心のどこかに社会に対する不満はあるはず。
僕だってクソみたいな会社で働いていて、入社してすぐに経理のオバハンとお金のことで喧嘩した僕の意見は本社に何一つ通らないし、大事な連絡すら「あれ?言ってませんでしたっけ?」とかいう調子で疎外感を感じる毎日です。
もう少しでアーサー・フレックになっちまいますよ。うちの会社マジでクソなんですよ。
経理のオバハンはあとから色々理由つけて残業代とか給料を減らそうとしてくるし、
仕事で海外へ行く時に会社の金で社長の娘まで連れて行ってるし、
有給を使わせないようにいやらしいシフトを組むし(中間管理的な位置にいる僕には「取らせるな」と言ってきます)、
1番ひどいのは、最近リニューアルしたWEBサイトなんて表記された素材と写真の素材が違うんですよ(写真が違うって言ったら「違いますよ」と返答が来たので広告審査機構に報告したけど効果なし……)。
数年前に素材を変えたことを表記してなくてそれが客にバレて炎上したくせに、また同じことを繰り返そうとしています。何にも反省してないクソ会社なんです。
それでいてお客様を第一に思っているフリをするからヘドがでるわ。
でも僕はアーサーにならないために、もう仕事は手を抜くことにしました。なにか用事があったりするとすぐに早退します(しっかり給料から引かれてるけど)。
仕事中もお客さんいないとパソコンでゲームのこととか調べてるし。クソ会社で真面目ぶってても鬱憤がたまってこっちがバカみたいですよね。
アーサーフレックにならないためにも、抜けるときは手を抜いて働いていきたいと思います。
と言った感じで「ジョーカー」を見たそれぞれがそれぞれの受け止め方をして「あ〜深いな〜とんでもね〜映画を見たな〜」などと満足をしていると、
最後に「誰にもわからない」といって視聴者を突き放し、これはコメディなんだよーんといった感じの追いかけっこをして終わります。
めちゃくちゃ好きな終わり方だ……なんかあれですね、ほんと色々考えすぎない方がいいな。仕事や学校で嫌なことがあっても自殺とかすんなよな。
PEANUTSのライナスも「どんな問題も逃げきれないほど大きかったり むずかしかったりはしない」って言ってたぞ。
俺は仕事怠けてるぜ。自分が壊れるくらいなら、逃げちゃっていいんだぜ。
そんな感じで、明日も笑って生きてこうぜ!
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自分が正しいと証明してやるといったジョーカーの心情や過去が垣間見れ、今回の映画「ジョーカー」に大きな影響を与えています。
ラストシーンをハッキリと描写していないために、ファンの間で永遠に論争が繰り広げられる系の作品です。