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映画「志乃ちゃんは自分の名前が言えない」自分と違う人をあざ笑った事がないと言えますか?

 

 

独り言や母親とはつっかえずに喋れるのに、母親以外と喋ろうとすると言葉がうまくでてこない志乃、

音楽が大好きで将来の夢はミュージシャンなのに音痴で周りから笑われてきた加代、

空気が読めずウルサいだけのお調子者で煙たがられる菊地。

 

高校という当事者にとっては世界の全てである学校生活の中で、

仲良くなりたいけど笑われたくないからクラスで空気を消して孤立している志乃が、

校舎の角で独り音楽を聴いていた加代と出会ったことをキッカケに少しずつ距離を縮めていくお話です。

 

志乃ちゃんは自分の名前が言えない(※ネタバレあり)

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原作:押見修造

監督:湯浅弘章

脚本:足立紳

出演:南沙良、蒔田彩珠、萩原利久 他

公開:2018年7月14日

 

あらすじと感想

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「はじめまして、大島志乃です」

入学式の日、鏡の前で不安そうに自己紹介の練習をする志乃。

新しい環境、これから3年付き合わなければいけない知らない人たち、

緊張するよね〜と思いながら見ていると、自己紹介本番では志乃の様子が練習の時とえらく違います。

「おお、おお、おお……し、しし志乃、お大島です」

「は?外人?ブワッハハハハハ」

志乃は、人を前にすると一言目がつっかえてしまうみたいです。

それを知らずにクラスの中心になろうとしている菊地というクソ男子は笑い飛ばします(ツヨシ・キクチデース)。

 

特に母音から始まる文字でつっかえてしまうので、苗字からより名前からの方が言いやすいことを志乃が必死に説明しようとしていると

「いいわ、次の人」

担任の教師は気を遣って止めさせます。志乃の必死な説明に耳を傾けることなく。

この教師はマジでクソで、志乃を呼び出して「先生も協力するから、名前くらい言えるようになろう!」とクソ発言。

思いやりアピールのつもりなんだろうけど、これって「喋れないあなたが悪い」と言ってるだけの見当違いですよね。

テメーこそコミュニケーションするつもりあるのかと言いたくなっちゃいます(そもそも自己紹介を止めたのはテメーなのに何言ってんだか)

なんで他の方法を考えずに枠にはめようとするのか理解ができないっすね。

自分の思うようにいかないと問題児扱いしたり、平気で人の夢を笑う教師は大勢いますがその典型的なクソが担任になってしまったら絶望しかないです。

 

 

 

昼食中、周りが群れになって会話しながら食べている中で孤立している志乃は、教室から抜け出して体育館の裏で弁当を食べるようになるのですが、そこで独り音楽を聴いていた加代と出会います。

話しかけようとしている志乃に加代は「喋れないなら書けばいいじゃん」とメモ帳とペンを差し出すんです。

「何か面白いこと書いて。早く。」

メモ帳には「おちんちん」と書かれていたので、いつまでたってもコロコロコミック脳の僕は笑っちゃいました(志乃が独りじゃなくなったことに安堵したってのもありますよ!)。

 

それから2人が少しずつ距離を縮めようとする中で、志乃は加代の音痴な歌を笑ってしまうんですよ。

加代は自分のことを笑わなかったのに、私は加代が気にしていることを笑ってしまったと、過ちに気づいた志乃は深く後悔。

加代は志乃と仲直りするのですが、あとで志乃が自分を笑った菊地のことは許せないのがまた人間臭くて良いんです。理屈じゃないよね。

あと志乃は筆記で伝えるという手段を得た後も、まずは口で伝えようと努力していて強い人間だと思いました。

周りにいる大勢と違うというだけで笑われ続けてきた人ってのは、のほほんと生きてきた僕なんかよりずっと強いですよ。

 

むしろ僕は志乃のことを笑った菊地のように、他者を笑い者にしてしまったことがあります。

小学生の頃の僕はとてもワンパクでどうしようも無いやつで、仲のいい友達にさえ嫌がることを続け、

耐えきれなくなった友達からハリー・ポッターが4冊入った手提げ袋でぶん殴られたことがありました(こんなヤツに今でも友達でいてくれているので頭が上がらない)。

転校してきたクラスメイトを笑いのネタにしたこともありました。

まあ自分が中学で転校して田舎の不良みたいな人たちに目をつけられ今までの行いが全て自分に返ってきたんですけど。その時にようやく自分の罪深さを知りました。

人見知りってのもあって中々クラスに馴染めないままそのイメージの人物像が出来上がってしまい、残りの中学校生活は言葉数が激減したなあ。

 

 

 

話を映画に戻して菊地はというと、クラスの中心になろうと騒ぎ立てるのですが面白くないし空気読めないただウルサいだけの男なので誰からも相手にされなくなります。

中学生のころ菊地はいじめられていたようですが、高校では相手にされないのがリアル。高校生くらいになると、合わない人とは面倒臭いから関わらないようになるんですよね。

 

夏休み最終日、独りでブラブラしている菊地は駅前で路上ライブしている加代と志乃を見つけます。

志乃は歌ではつっかえずに発声することができたので、夏休み中ずっと加代(ギター)と歌の練習をしていました。

この夏休みのシーンは最終日の菊地登場まで同級生が誰一人でてこないで、志乃と加代の二人だけの世界が海を背景にとても美しく描かれていてグッときます。

それの世界をぶち壊す菊地。翌日、クラスで注目を集めようと大声出して路上ライブを暴露する菊地。

ほっぺたひっぱたかれ、茶化してごめんという菊地。

本当はお前らの仲間に入れて欲しかったんだという菊地。

こいつもこいつで辛い思いをしてるんだと手を差し伸べる加代ですが、志乃は許してくれない。

菊地は以前志乃のことを笑ったりわざと喋らせようとしたことを謝り、仲良くしてほしいと言うのですが、

その中で「やっと手にした居場所を離したくない」と言ってて、多分こいつは本当に自分が悪いことをしたとは思ってませんね。

 

いやでも、無意識のうちに人を傷つけてしまうってことは誰にでもありうることで。

「人のふり見て我がふり直せ」ですよ。映画や漫画からは本当に色々と気づかされます。

「自分のことを一番恥ずかしいと思っているのは自分自身だった」と涙と鼻水垂らしながらいう志乃の言葉も突き刺さるんですわ……

志乃にそう思わせてしまったのは、やっぱり周りの人間なんですわ。

昨今は多様性を重んじる作品がいっぱいあって、それをみて人は感動しちゃったりするわけですが、

自分事となると別になってしまうのは何故と、こういうことを書くたびに自分自身に問いてはいます。

 

この作品は漫画が原作なのですが、漫画のAmazonレビューに志乃と同じように苦しんでいる人たちが心の叫びを書いています。

吃音症を知るために、Amazonレビューもぜひ読んでみてほしいです(本編では症状ゆえの問題と思って欲しくないためにあえてこの言葉は使っていないとのこと)。

 

 

 

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お題「#おうち時間