父の涙を見たのは、30年の人生で2度だけ。
1度目は僕が小学生の頃、祖父が亡くなった時。
葬式の挨拶で、押し込めていた感情が溢れ出し、父は泣いていた。
2度目は僕が結婚した時、会食での出来事だった。
母と父は離婚していて、中学生の頃に僕は父と離れたが、
僕の父親であることには変わりないので会食に呼んだ。
父は「行っても良いの?」と新婦側の親族のことを考えていたが、来てくれた。
当日、神前結婚式を行い、和やかな会食の最中に両親へ記念品を贈った。
まず母へ。
ドライフラワーの花束がボードに固定されているやつを渡すと、泣いた。
母は、式の最中もずっと泣いていた。
新郎新婦入場の時、僕らは母の啜り泣きが聞こえる方へ歩いて行った。
母は昔から泣かせにくる映画やテレビ番組で制作側のご期待通り泣いてきたし、
僕が学生の頃、合唱とかを披露するだけでも泣くから見飽きているので、
母が感動して流す涙に僕は無表情でいられる。
次に父へ。
通常記念品は、母にだけ渡すのが一般的のようなのだが、
うちは離婚していたので一応父にも用意した。
不意を突かれたためか、父は泣いた。号泣した。
色々思うことがあったのかもしれない。
僕も不意を突かれた。
色々思うことがあったのだ。
父が号泣しているのを見て、僕も泣きそうになった。
オヤジ、その中ただの商品券なんだよ。薄情な息子で、すまんな……
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