黒人警官が白人至上主義に潜入捜査する実話ベースの映画「ブラック・クランズマン」がブッ刺さったため、同じ監督の有名作品を見てみたいなと思って借りてきたのが今回紹介する「ドゥ・ザ・ライト・シング」です。
アフリカ系VSイタリア系の差別合戦なのですがこの作品は……かなり黒人寄りに作られてて、調子に乗った若者VSピザ屋の店主の戦いだったはずが、「俺たちは黒人だからこういう目に合う」といった問題のすり替えにより起こらなくてよい暴動が起きてしまう、問題ありな作品でした……
パブリックエネミーの「Fight The Power」が劇中で繰り返し繰り返し流れたり、80年代のNY・ブルックリンの治安の悪そうな街並みやファッションも見ていて楽しいので、人種差別の作品だと身構えずに気楽に見れますよ〜。
ドゥ・ザ・ライト・シング(※ネタバレあり)
監督:スパイク・リー
脚本:スパイク・リー
公開:1990年4月21日
あらすじと感想:スパゲティ野郎!ピザ持ってアフリカへ帰れ!自分たちの種を誇りに思い、他種を罵る登場人物たちに呆れる
パブリックエネミーの「Fight The Power」をバッグに力強く踊る女性のオープニングに、
これは差別と闘う勇敢なマイノリティたちの話が期待できそうだ!とウキウキしながら見始めました。
主人公は、ピザ屋で働く黒人・ムーキー。
彼はなんの仕事をしても長続きせずフラフラ生きてきて、ピザ屋の配達に行っても寄り道してシャワー浴びたり、エッチなことしたり。
ちなみに彼には幼い子供がいるのですが、家には毎日帰って来ず週1くらいのダメ人間です。
そんな彼でも、ピザ屋の店主サルは何も言わず、広い心で接します。
サルはイタリア系で、ロバート・デ・ニーロやジョン・トラボルタなど同じくイタリア系の著名人たちの写真を店内に貼っています。
ある時、ムーキーの知り合いの黒人が店内の写真を見ていちゃもんを言います「ここは黒人街だぞ!?黒人の写真を貼れ!俺たちの誇りマルコムX、ネルソン・マンデラ、マイケル・ジャーダンを!」クソ迷惑な客だなあ……
サルのお店はブルックリンにあり、客は黒人ばかり。同胞が多い地域ではピザ屋さんがいっぱいあるため、ブルックリンで開業し25年続けてきました。
サルの息子は黒人を嫌い、店を移転しようと持ちかけます。サルが「なぜそこまで黒人を嫌う?」と聞くと応えは「友達が俺のことを笑うんだ」
そんなバカ息子にサルは「25年ここで店をやってきた。皆俺のピザを食べて大きくなっていくのを見てきた。お前は笑うかもしれんが、俺には誇りなんだ」と言います。
サルはめちゃくちゃ良い人なんですよ。他の登場人物はアホばっかり。
ピザ屋の向かいで韓国人が経営するコンビニでは、好きなビールが売り切れてただけで黒人の市長がブチギレて「ここは中国だか監督だかとは違うんだ!このビールは切らさず置いとけ!」
そのコンビニを眺めている黒人中年3人は韓国人を妬んで「難民ボートを降りてたった1年で良いとこに店をだして繁盛してやがる。古顔の俺たちより羽振りがいいのはなんでだ?韓国人が天才で、黒人はバカなのか?」
「そうだ、黒人だからさ。それ以外説明はつかん」「黒人はいつも差別されてる、ここでもそうだ」いつもいつも昼間っから3人でダベってないで何か行動しろよ……
この作品、黒人が黒人であることを理由に、自分の都合の悪いことを言い訳をするからすごい腹が立つんですよ。
シルヴェスター・スタローンの「周りを指差し、己の弱さを人のせいにするな」という台詞をそのまんまコイツらにぶち込みたい(台詞はロッキー5より。ちなみにスタローンはイタリア系)。
イタリア系サルの息子も、嫌いな黒人から「好きなバスケット選手は?」と聞かれ「マジック・ジョンソン」と応え、好きな映画スターはエディ・マーフィ。
それどっちもお前が悪口言って嫌ってる黒人だぞ!するとサルの息子は「それとこれとは違う。奴らは黒人じゃあない。黒人を超えた黒人だから、お前らとは違う」とか吐かしてやんの……
そして弟には「黒人を信用するな、背中から刺されるぞ、本に書いてあった」と忠告……
でもこういう本に書いてあったことやネットで知ったことが間違っていたり、学校で習うことがその国の都合がいいように刷り込まれていることなんて現実にあるから恐ろしいんですよねえ。
劇中では誰もが暑い暑いと口にして汗が垂れ落ち、イライラも増してしまう……
サルの店に黒人の写真が飾られていないことにご立腹のバカは、黒人仲間に「サルの店でピザを食うな、ボイコットだ」と伝えて回ります。
ですがサルのピザで育ってきた黒人たちは「え?なんで?あのピザちょー美味しいのに?あーピザ食いたくなってきた、行こうぜ皆!」と一蹴される始末。
「サルは俺たちに何をした?」という問いにバカは「黒人の写真がない!」
そしてなんとか集まった3人(自分含め)でピザ屋へ乗り込み、サルとバカどもの喧嘩が始まります。
警察が駆けつけ、サムに馬乗りになって殴りつけてるバカの一味が取り押さえられ、そのうちの一人が警官に首を絞められ殺されてしまいます。
そして黒人の野次馬たちは「黒人だから殺されたんだ!」と喚き、あろうことか矛先をサムに向けます。絞め殺した警官の中には黒人もいたのに。
こうして問題をすり替えられ、サムのピザ屋はガラスを割られテーブルを倒され火をつけられ。
気が済んだ黒人が散っていき、主人公が「店は保険下りるから良いじゃん」とか言うんですがそういう問題なのか?まあ確かに、店でなくサム自身が標的にされたら命はなかったかもしれないけど……
反面教師的な作品はこれでおしまい。救いのない話でした。
エンディングでは、キング牧師とマルコム・Xの言葉が流れます。
暴力は破滅に至る らせん状の下り階段で
“目には目を”の思想は すべてを盲人に導く
暴力は敵の理解を求めず 敵をはずかしめる
暴力は愛でなく 憎しみを糧とし
“対話”ではなく“独自”しか存在しない社会を生む
そして暴力は自らを滅ぼし
生き残った者の心には憎しみを
暴力を振るった者には残虐性を植え付ける
マーティン・ルーサー・キング
アメリカには善人も多いが悪人も多い
権力を手中に握り
我々の進む道を阻んでいるのは悪い奴らで
この状況を打破するために闘うのは我々の権利である
私は暴力を擁護する者ではないが
自己防衛のための暴力を否定する者でもない
自己防衛のための暴力は“暴力”ではなく“知性”と呼ぶべきである
マルコム・X
相反する思想、あなたはどっち派?(きのこの山VSたけのこの里みたいに言うな)
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映画パロディーイラストのグッズ作ってます。興味があったらみてください。
白人至上主義KKKに、黒人警官が潜入するというウソみたいな実話がベースのスパイク。リー監督作品です。スリリングだし問題定義もしっかりしてて見応えありますよ〜。
選挙権がなかった黒人が、非暴力の主張で勝ち取った実話のコミックです。全3巻でサクッと読めるし、史実を知っておくためにも黒人差別ものを見る前に読んでおきたい作品です。
お題「#おうち時間」